2017.11.17オーボエ奏者 清水明先生インタビュー

皆さん、こんにちは。
唐突ですがオーボエ(Oboe)という楽器をご存知ですか?
オーボエは2枚のリードを使って音を出すダブルリードの楽器です。ダブルリード楽器の歴史はたいへん古く、古代エジプトの壁画にも描かれており、その頃の日本は縄文時代にまで遡ります。その後、ダブルリード楽器は野外楽器として発展し、やがて世界中に広まり、ヨーロッパで室内楽用に改良されたものが現在のオーボエの原型だと言われております。

さて、時代は一気に現代に戻りますが、誕生から数百年、様々な困難を乗り越え進化してきたオーボエは「世界で一番難しい木管楽器」としてギネスブックに載っていることはご存知の方も多いのではないでしょうか?

 

Most difficult musical instruments to play
The American Music Conference announced in September 1977 that the most difficult is the French horn and oboe. The latter of which has been described as the ill woodwind that no-one blows good.

 

今回、当社でも長年とてもお世話になっているオーボエ奏者の清水明先生(プロフィールはこちら)が新たなパートナーとしてヤマハカスタム・オーボエ(YOB-831L)をご採用いただいた際に、あらためてご自身のルーツやオーボエの魅力、今後の展望など、とても興味深く貴重なお話を伺うことができましたので、是非、皆さまにもご紹介をさせて頂きたいと思います。

 


ファゴットがバリケードになっていたんです!?


---オーボエをはじめた時期やきっかけはどのような経緯でしたか?

簡単に言うのは難しいのですが、高校時代までトロンボーンをやっていました。その後、志望大学(関西学院大学)に合格すれば、吹奏楽で金管楽器はしんどいからオーケストラでファゴットをしようと考えていました。そんな思いで入学前にオーケストラ部の練習を見学しに行ったのですが、隣の吹奏楽部の練習場から聞こえてくる演奏があまりにも見事で素晴らしく、当時その大学の吹奏楽部は10年間連続で全国大会で優勝するようなレベルでしたので当然といえばそうなんですが、これはもう吹奏楽部でファゴットをするしかないと大きく心を動かされた瞬間でした。それから無事に試験をパスして、いざ入学後に吹奏楽部へ行くとバリケードで入れず!?、、、目を疑いましたが、よく見るとファゴットがバリケードになっていたんです。当時は、学生運動(戦後に起きた大学生による大学改革運動や政治運動)が盛んな時代で、、、で仕方なくファゴットを買うまで同じダブルリードだからという理由でオーボエを勧められ始めたのがきっかけでした。

 


プロデビューに至るまでの波乱万丈な様々なご縁、人生の転機を感じるストーリー


---その後、先生は関西学院大学から京都市立芸術大学に入りなおされて、プロの道へと進まれたわけですが、その道を選んだ経緯や理由を教えて下さい

京都市立芸術大学に入りなおしたのは、もちろんオーボエをしたかったからなんですが、いざ就職となると選択肢が少なく悩んでいたところ、あるご縁から某女子中高等学校の教職(専任教諭)に就くことになりました。ただ、その間も神戸フィルハーモニックや他の団で演奏活動もしていたのですが、ひょんなことから関西室内楽協会、当時はアンサンブルアルフィーネという楽団名でしたが、木管の大きなオクテットを組むから清水君もやってみないかとお誘いがあったのです。そのメンバーはというと、海外留学から帰ってきた人や関西のプロ楽団で活躍するそうそうたるメンバー(関西弁で強調するとブイブイ言わしているメンバー)で、そんな人たちと一緒に演奏できるのはものすごく楽しくて、次第に学校の先生よりこっちの方が面白いなと思うようになり、もっとオーボエを追求したくてドイツへの留学を決意しました。ただ、学校へはまた戻るつもりでしたので休職届を出し留学していたのですが、その留学中にオファーをいただいた関西フィルハーモニー管弦楽団のオーディションを受けたら、なんと合格することができたのです。もうこうなったらやるしかないと覚悟を決めて、その足で学校へ行き、復職できなくなったお詫びと事情を説明して、そこからプロの道を歩みだしたということです。

---先生にとってオーボエの魅力とは何でしょうか?

オーボエの魅力というのか、自分がここまで長く続けてこれたのは、調子がいい時の素晴らしい感じ、心も満たされ、きっと聞いている人も心地良く感じてもらえているからだと思います。オーボエの音色自体好きですし、オーボエのために書かれた曲がけっこう好きなんですよ。特にバロック音楽が好きで、それで続いているんでしょうね、調子のいい時の事ばかり考えてますね。

---オーボエの嫌なところは?楽器としての難しさや音楽的な面など

吹奏楽はともかくとして、オーケストラは如実に演奏の粗が目立つので神経を使います。ちょっとしたことで発音が「プスッ」ってなり易いので気を遣うのと、もしそうなったらすごく恥ずかしいし、音が出ないとか、音程が悪いのも怖いですね。実際演奏をしだすと音色がどうこうというよりも音が出るかピッチが取れるか、、、その辺ですよね、、、結局は。

 


リードは、オーボエを始めたころから全部自分で作ってました


---リードの製作はいつ頃からされていましたか?

リードの製作は、オーボエを始めた頃からです。というのは、当時は完成リードを販売している楽器店が殆どなくて、自分で作るしかなかったということです。あとは先生や先輩にもらうくらいでしたね。

---リード製作用のメイキングマシンもその頃に揃えられたのですか?

いいえ、メイキングマシンなんて、、、そもそも存在すら当時は知りませんでしたよ。だからパーツとしてグロタンのチューブや舟型はどこかで買いましたが、専用工具はとても高価なものでしたので市販のナイフで削ったりして作ってましたね。そういえばプラークなんかも下敷きを加工して代用してました。僕より前の世代の人たちはもっと大変だったと思いますよ。今と違って情報が少ない時代でしたから絵や写真で見たものを想像しながら手探りで作るみたいな、、、メイキングやガウジングマシンを知ったのは京都市立芸術大学に入ってかなり経ってからでしたし、自分で手に入れたのは関西フィルハーモニー管弦楽団に入団してからですよ。それまでは全部自分で作ってましたね。

---オーボエは演奏も難しい上、リードも自作とは本当に大変な楽器ですね。では、生徒さんのリードを作る場合はどうされていますか?

ほぼオーダーメイドのような感じで製作しています。楽器やその人の吹き方で響きが全く変わるので、特性の違うサンプルを数種類準備しておいて、どのタイプが良いか絞っていき最終的にその人用に製作します。

 


完成リード選びのポイントは、気に入ったメーカーのものを追求することです


---今では、完成リードを取り扱っている楽器店も増えましたが、リード選びのポイントは?

最近の市販されている完成リードは、よく鳴るし、音圧が少なくてもピッチが取りやすくできていますね。ただ、これは良い意味でも悪い意味でも、よく鳴るというのはしっかり息を入れなくても鳴るし、音圧がゆるくてもピッチが取りやすい反面、本当にちゃんと吹いたらピッチが上がってしまうということなんですよ。これがね、、、完成リードはやっぱり仕方ないところでしょうね。

---最近通販なんかで完成リードを買ったものの、全く合わなかったとか無駄にしてしまったという話をよく聞きますが、そんなこともあってブリーズ楽器では、リードを買いに来られたお客さまには試奏して選んでもうらうようにしています。試奏後の管理は大変ですが、良いものを選べて喜んでもらえるならその方が私たちも嬉しいので、そうさせてもらっています。

試奏できるのはとても良いことですね。完成リード選びのポイントは、気に入ったものがあれば、そのメーカーのものを追求することです。


 


新たなパートナー ヤマハ カスタム・オーボエ(YOB-831L)


---ヤマハカスタム・オーボエ(YOB-831L)を購入された経緯について モデル仕様・詳細はこちら

きっかけはヤマハのオーボエが16年ぶりにフルモデルチェンジしたということで新しいモデルを吹かせてもらったのがきっかけでした。そしたら、意外と良くて、、、意外っていうのは失礼ですが、これは面白いなと思い、それから何ヶ月間お借りすることができたので、その間に少し自分でもさわったり調整をしたりしていたら本当にいい感じになっていったんです。それまではずっとマリゴ社のオーボエを吹いていたのですが、新しいヤマハのオーボエでも同じリードが使えたことも、とても好印象でしたね。今日も両方持ってますが、どちらでも吹けるというのは本当に良いです。私は、どちらかというと過激な方(演奏時)にいってしまうので自分がどこにいるか分からくなった時に、ヤマハとマリゴの両方持っているとすごくいいんですよ。言葉では難しいのですが、何か歯止めが効くというのか、変な方向にいく私を止めてくれるというのか、、、どちらにも良さがあって使い分けができるところがとても気に入っています。

---最終的な意思決定はどのようなタイミングでしたか?

意思決定は、演奏会で隣の人から「それヤマハですか?」って聞かれて、いい意味でね。周囲からの評判も良かったので、実際本番で使ってみて、これはいけると思えたから購入したんですよ。

 


未来ある若手の育成と活躍を見ることが生きがいです


---今後の活動や展望についてお話をお聞かせください

もう歳だから自分での展望とかは特にありませんが、今の喜びは、自分の生徒に限らず若い人たちが活躍しているのを見ることが生きがいになっています。日本の若い子たちが海外でも活躍し始めていて、自分が若かった頃とは雲泥の差ですよ。そんな若い人たちが活躍する姿を見るのは本当に楽しいですし、自分が少しでも若手の育成に役に立てているのであれば嬉しく思います。

 

若手が育ち、また次の世代へと継承していくことの大切さ。レッスンの様子からもその情熱は十二分に伝わってきます。

演奏家として、指導者として、人として、いつまでも追求し続けるポジティブな姿勢は、私たちスタッフも側にいて、とても勉強になります。

≪番外編≫
最後までお読みいただいきまして本当にありがとうございます。趣旨から少し外れていたので割愛をしていた質問があったのですが、折角なので番外編として掲載をさせて頂きますね。

---音楽(楽器)以外の趣味はございますか?

旅行ですね、特に海外旅行。頻繁に行くことはできませんが、やはり刺激を受けに行きます。先日もミューヘン国際コンクールを一週間聴いてきましたが、やはりすごいレベルで沢山の刺激を受けてきました。あとはローマやギリシャ、イタリアなどヨーロッパの音楽をやっていることもあるせいか、バロック建築や絵画、その地域の文化に触れることが面白くて楽しんでいます。

 


オーボエ・レッスン こちらでも紹介しています

清水先生のレッスンは、毎月1-2回/日(10:00-19:00)のペースで実施しています。

※注1)1レッスン=1時間
※注2)完全予約制となりますので、ご希望の方は、事前にご連絡の上、ご予約をお願い致します。
※注3)恐れ入りますが、レッスン実施日は、毎月異なりますので下記窓口へお問い合わせ下さい。

【ご予約/お問い合わせ先】078-230-6070

 

 

ブリーズ楽器は、オーボエリードの試奏が可能です。豊富なラインナップの中からベストリードを選びに是非ご来店ください。

 

本件に関するご不明な点やご質問などがございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。